高木 修(たかぎ おさむ)様
白夜書房「パチスロパニック7」「漫画パチンカー」編集長
趣味が高じてパチンコ漫画の編集者に。若くして編集長を務め、人気のパチスロ・パチンコ漫画雑誌を手がける。
■白夜書房
目次
■「上手い人ほど“やらされてる感”を抱かせずに導いていけるんじゃないかな」
■「親が言う「浅はかな考えはするんじゃない」っていうのはまさにその通り!」
■「隠居生活を面白くするためにも、今は必死で頑張りたい」
■「ビジョンとか難しいことは結果的に後付けでも良い」
---現在お仕事はどんなことをなさっているのですか?
「パチスロパニック7」というパチスロの漫画雑誌と、「漫画パチンカー」というパチンコの漫画雑誌の編集をやっています。要は、今度こんな漫画を作ろうと漫画家さんと打ち合わせをして、出来上がった作品をまとめて雑誌にしていくという仕事です。
---どのようにして今度どんな漫画を作るか決めていくんですか?
パチンコ・パチスロにも流行というものがあって、読者がどんな作品を読みたがっているかと考えていくと、やっぱり人気のある台のもの。
それから、作家さんそれぞれに「こういうのをやると面白いけど、これだとあまりうまくいかない場合がある」というのがあるので、そういった読者のニーズと漫画家さんの個性とをあわせて考えて面白い作品が作れるように提案していきます。編集部員っていうのは、偉そうに「こうやってくれ」なんて言うんじゃなくて、良い作品を作るためのお手伝いとして提案をしていくんです。あくまでお願いして仕事をやってもらうという形ですね。作ってくれたものがつまらないと思った時には「こうしてください」ってことは言うんですが、できれば気づかれないうちに面白い作品が書けるように導いていきたい、というのはありますね。上手い人ほど“やらされてる感”を抱かせずに、こっちの求める通りにやってもらえるんじゃないかな。
---漫画雑誌の編集というと「締め切りだぞー」とか言って、めっちゃ原稿を取り立ててるイメージだったんですが、実際にはそんなこともないんですね。
例えば30日までってお願いしていて、25日に仕上げる人なんて、いないって。そこまで時間があるわけだからギリギリまでに仕上げればいいって思いがちだし、やっていくうちについズルズルとなってしまいがち。
それをなんとかするのが僕らの仕事なんだけど、どうにかできないんですよ。あくまで書くのは作家さんだから。「なんとか早くして下さい」とは言うけど、偉そうに「早くしろ」なんてことは言ったら怒ってしまうかもしれない。それは極端な話で実際にはそんな人はまず居ないんだけど、それでもやっぱり気分を悪くさせちゃいけない。だから、実際にはひたすら「お願いします、お願いします」という形ですね。他社の編集の人とも会ったりするけど、むしろ大手の人ほどそのあたりはきちんとしてるかな。相手にする作家さんが大きくなればなるほど発言力も強くなってくるから、ちょっとでも気分を害されちゃうと収拾つかなくなってしまうからね。編集っていう仕事は聞こえは良いけど、実際には昔からそんな泥臭い感じですよ。
---現在のお仕事に就かれた経緯というのは?
大学1年目は真面目に学校に行ってたんだけど、2年目に麻雀を覚えてしまって雀荘にずっといるようになったのね。そしたら授業行かないでしょ。そのまま学年を重ねていって4年目になると周りの友達卒業するからさすがにマズイなと思って授業行ったのね。当時は馬鹿みたいに麻雀をやりながらパチンコとパチスロを覚えて、お金がなくなってパチンコ屋の店員をやってたの。そしたらパチンコ屋で、「一日だけ手伝いに行ってくれ」って言われて地方に飛ばされて、そしたら実はその日が履修登録の日だったんだけど僕は日付を勘違いしてたもんだから知らずに働いてて。結局履修登録できなくて一年間棒に振ることになっちゃったの。
こんなダメな人間だけど、しょうがないから一年間しっかり働こうと頑張ってたら認められて、お店をちゃんとやって欲しいという話になったの。それで店長候補みたいな形になったんだけど、僕に目をかけてくれた先輩が店の金に手をつけたのがバレて逃げちゃった。僕はその人をすごく尊敬してたから、その人がいなくなったらパチンコ屋を続ける意味を失っちゃったのね。一度は大学辞めて仕事をしようかと思ったんだけど、その先輩に逃げられて宙ぶらりんになっちゃって。やっぱり卒業はしようと5年目は働きながら全コマとってギリギリで卒業できちゃった。もう1年行くつもりでお金貯めてたくらいで、まさか卒業できるとは思ってなかったから、もちろん就職活動なんてしてなかった。だけど、このままいつまでもその店で働くのもいかがなものかと思ってたところに、当時からずっと特殊で面白い本を出していた白夜書房の本に募集が載ってた。必勝ガイドっていう文字だけの本とパチンカーワールドっていう漫画雑誌に応募したら、漫画雑誌の方にうまく入れた。「出版社に務めてます」って言うと聞こえだけは良いでしょ? 特に強い意志があったわけでもなんでもなくて、その聞こえの良さが欲しくて、たまたますごく好きな雑誌の募集があったから応募したら入れた、という形ですね。
---好きなことから発展した形ですね?
そうですね。僕は日頃から、難しいことっていうのは、とりあえずやっちゃってから考えれば良いかなって思ってて。ダメって言われたら「あぁ、ダメなんだな」、うまくいったらそれで儲けもん。そんなな考え方が昔から多くって。まぁ、それで実際ダメなことが多いんだけどね。(笑)そんな風に、とりあえずやってみようという考え方があったから今の会社に応募したっていうのはあるんじゃないかな。
---就職されてから何年くらいで編集長になられたんですか?
えっと、9年かな?
---9年で編集長っていうのは早いですよね?
うん、遅い方ではないかな。ただね、これは運が良かった。一昨年末くらいまで空前のパチスロブームがきていて、そんな中パチスロ雑誌を作っていた僕の成績は勝手に良くなってしまう。もちろん面白いものは作っていたワケだけど、そういう時代の後押しがあって自分の実力以上の結果が出せたんですよ。たまたまそういう時代が来たからよかったけど、そういう時代が来る前に終わってしまうことっていうのもたくさんある。でも僕は、続けていれば結果的にダメになっても完全にムダになってしまうことはないんじゃないかなって思うんです。
それこそ大学に5年行ったからこそできた経験はあるわけで。周りには似たような状況で辞めてっちゃった連中がいたわけ。「二回ダブったから辞めるわ」ってね。ホントはね、二年目で辞めようかなと思ってたけど、結果的には辞めなかったから今ここにいられる。くだらない理由で1年や2年で辞めてしまわなくて本当に良かった。親が言う「浅はかな考えはするんじゃない」っていうのはまさにその通り!当時は何言ってるのか判んなかったけど。
---その言葉が欲しかったです!笑
でも、辞めちゃってうまくいってる人ももちろんいるから一概には言えないけどね。ただね、やるべきこと・目の前のことをきちんとやった上でも遊べるからね。後は遊びの種類。僕のはまだマシだった気がするんだよね。麻雀・パチンコ・パチスロってのは、抜け出せたからまだよかったけど、抜け出せないものってのはやっぱり世の中にはある。クスリに手を出しちゃったり、大きな借金しちゃったりすると大変じゃないかな・・・
---今のお仕事でやりがいを感じる時というのは?
下世話な話だけど、一番嬉しいのは売れた時。本、特に雑誌は売れてなんぼ。文化事業みたいな場合もあるけど、ウチみたいなのは特に売れるかが大事。なんとかして少しでも多く売りたいけど、ウソは書けない。「どうしたら買い手が買いたくなるのか?」って頭使って考えて、見せ方なんかを工夫してやっていって、その結果として「売れた!」と数字が跳ね返ってくればそれは嬉しいよ。
売れないものは出せないじゃない?売れないって分かってるものを出し続けるってのは、資本主義の倫理から外れてるから。自分が面白いと思ったモノはどんどん出し続けて行きたい、だったら売れて欲しいなって思う。それで売れたとなれば嬉しく思う、それがやりがいだね。
---逆に辛いことっていうのは?
それはもちろん、売れないこと。例えば、自分としてはすごく面白いモノができた、ネットでの評価も高い、「これはいけた!!」と思ってたら結果的には売れなかったということがある。それっていうのは、マニアうけしたけど一般的には興味なかったっていう形。これは凄く複雑で、内容は悪くなかったけどそれを上手く出し切れなかったということ。読んでもらえれば絶対に面白かったのに売れなかったとなると、これは本当に悔しい。
---将来に対してどんな夢とか野望を持ってらっしゃいますか?
将来はゆっくり過ごしたいな。今は好きなことをやっていて良いんだけど、体力が続くまでっていうのが大事だと思ってて。65歳とかになったら自然の多いところに完全に引きこもって隠居生活をしたいな。とにかく今は全力でこの仕事していて、好きだしやりがいもあるし、今は漫画だけだけどそれに限らず売れるものを作っていって、「年齢も年齢だしもういいや」ってとこまでいったらいさぎよくどこかにいきたいな。でも、そうやって自然と共にのんびり暮らすのってたぶん、思いっきりやった後じゃないと面白くないんじゃないかと思うんだよね。面白くなるために、今一生懸命やっておきたい。今はそんな暮らししてもダメよ、ホントに。それは本当に夢で、それまでに「自分はこれをやってきたんだ!」って誇れるものを作りたいな。こんなこと語るのは結構恥ずかしいんだけどね(笑)。
---最後に、学生に向けてメッセージを!
さっきも言ったけど、何年かかってでも取りあえず卒業はした方が良いと思う。勉強ってムダって思う瞬間がたくさんあって、すごくつまんない時も多いんだけど、後になって「あぁ良かったな」って思ったり、その時分からなかったことが「こういうことだったのか」って分かったりすることがある。やっぱりそれは途中で辞めちゃったら分からないこと。例えば1?2年生とかで「これがやりたい」って言って大学辞めてったりするけど、別にその瞬間にそれをやらなくても、卒業してからやったって基本的には遅くない。授業に出て、結果的に寝ちゃってもそれはそれ、怒られたら怒られたでそれも意味があると思うんだよね。
難しいこと考えなくて良いと思うよ。だって、ハッキリ言って「これがやりたい!」って思えることって少ないと思う。今の就職活動って三年生でやるでしょ?その時点でどの仕事したい、将来何したいって決めるのってホントに大変だと思うから。やりきって卒業したっていう事実に対して世間は最低限の評価はするからね。くだらないことで評価されるよりは、通常の評価をしてもらえるためにも卒業だけはした方が良いと思うよ。って5年間かけてした人間が言ってました(笑)。
面接で大学辞めた子の話を聞いてみると、1年で「やっぱり違うと思って辞めた」って言うのね。早いなって思うよ。頑張って勉強してそこに入っておいて違うって何?って思ったりするよ。みんな大学でやってたことと違うことやってるもん、大学で合ってる合ってないなんて決めなくても良いと思うな。
---僕らの世代って、ちっちゃな頃から「将来これこれがしたくて、そのためにはこれこれを勉強して」って、ビジョンを明確に描くのが良いことなんだって価値観を刷り込まれながら育ってきたと思うんです。でも、逆にそうやって理想を描いてしまえばしまうほど実際にそこに進んでいった時にギャップを感じてしまうのかなと思うのですが・・・
何にやりがいを感じるかなんてなかなか分からないからね。親からすれば、安定した職に就いて欲しいっていう理想はあると思うよ。俺に子供ができたらやっぱり公務員になれっていうと思うし。でもね、そんなビジョンなんて見つかんないよ。結果的に後づけで良いと思うな。ちゃんとしたところに、早く就職して、そのまま堅くなってください、っていうのが親の気持ちだろうけど、なかなか当人としては上手くいかないよね。
---ありがとうございました。
編集後記
最後にいただいた「ビジョンとか難しいことは後付でいい」というお話が印象的でした。僕自身将来何をしたいんだろうかと色々悩んだりしていたのですが、とにかく目の前にあることに全力でぶつかってみるのも良いんじゃないかと背中を押されたように思います。