柴田 有三 様(しばた ゆうぞう)
NPO法人KGC 理事長
学生時代から会社設立経験も持ち、現在は京都でKGCというユニークなNPO法人を立ち上げている。
■KGC (Knowledge Gathering and Connection)
―――今なさっているお仕事について簡単にご説明下さい。KGCというのはknowledge Gathering and Connectingの略。知識を集めてきてくっつけて新しいものを生み出すって言う意味です。キーワードは異分野融合。それと産学連携。これもある意味異分野である、大学と企業とを連携させて新しいものを生み出すこと。
あといろんな大学や分野を集めてきてくっつける。イノベーティブな、世の中を覆すような研究を生み出す場をプロデュースして作っていくのがぼくらの仕事です。
例えば、今までにない強い糸を作るとしたら、皆さんならどうしますか?
答えはいろいろあるんだよね。
普通は金属や炭素を使ったりする。だけど、例えばクモの糸って強いから、それを原料にして糸を作ったらどうかというバイオテクノロジーを使ったアイディアが出てくる。でもクモの糸をちょろちょろ出してもそんなに量が出ない。そこで大量生産する方法を考えて、牛とかヤギの乳って量が出るから、クモの遺伝子をヤギに入れて、ヤギのおっぱいからクモの糸が出たら大量生産できるんじゃないかってこういうアプローチができるんですよ。
ここからは仕事の話になるんだけど、今のって、天才が、例えば糸を作ろうとする人が、くもの巣を使おうと思いつけばいいんだけど、世の中みんなそんな天才じゃない。こういうことをやりたい、強い糸作りたい、イコールクモの巣使えばいいじゃんって思いつく人はそんなにいない。いろんな分野の視点を入れていくことによって、ああ、強い糸ならクモの巣もあるよねっていうアイディアが出てくる。
やりたいことを持ってる人とアイディアを出す人はたぶん一緒じゃなくていいんだよね。何かをやりたい、自分で考えなきゃっていうのが結構今の風潮だけど、そうじゃなくて、いろんな人からアイディアをもらうような場があることによって、その夢が実現する。
そういった場所作りをぼくらは仕事としている。やりたいことをうちに投げかけてくれたらいろんな人を集めてアイディアを出す、そして実現に繋げていくっていう仕事です。
―――具体的にはどんな流れで進めているんですか?
大学の研究者がもっと研究の幅を広げてみたいとか、市場ニーズ、つまり強い糸を作ってみたいとか、あとはこういうことしてみたいって思いつきなどがまずうちに寄せられる。それを基にして、いろんな人を集めてきてブレインストーミングをする。
ブレインストーミングってわかる?なんかみんなでワイワイガヤガヤやるような感じ。いろんなアイディアを出し合う。例えば強い糸作りたいって話が来た時に、金属でこうやればいいんじゃないかとか、炭素でとか、クモの巣でとか、アイディアがバーッと出ると。
で、方向性が見えてきて、クモの巣が一番よさそうじゃないかということになったら、クモの巣の専門家に話を聞きに言って本当に作れるかヒアリング調査する。これは行けそうかもという話になってきたら、クモの巣の専門家と強い糸作りたいっていう人を連れてきて研究会を開く。で、これは行けるなってなったら研究開発をしたり、実験やりましょうとか、お金どっかから引っ張ってきましょうとか。漠然としたアイディアから実現までこぎつけるのをお手伝いするのがうちの仕事。
こういうの(人を集めてブレインストーミングすること)を常に、毎日まではいかないが週に2回くらいいろんなところから案件をもらってやってます。
―――なぜこのお仕事を始められたのですか?
ぼくらがこういうことをやっているのは、世の中の多様性を高めていきたいということ。
なんか今の時代って息苦しいじゃないですか。閉塞感があって、ルールも厳しい。生まれながらにヒッキーもいるはずだし、生まれながらに犯罪者もいるはず。だけどそういう人たちって居場所がないんだよね。でも世の中に多様性があれば、そんなマイノリティの人たちが生きやすい場もできる。人のためとかではなく、いろんなものが生まれることによってこういう生き方もあるんだみたいなことになれば、みんなが住みよい町、世界になるんじゃないかと思って。
あと僕は大学で生物をやってたんですけど、生物の進化って単純で、多様性がどれだけ高まったかっていうのが進化の基準なんですよね。多様性を高めたいっていうのは前から言ってたんだけど、それは進化を促進する事だよって言われて。進化を促進するような組織にいたいからぼくはこういう仕事をやっている。
それから、僕はワイワイガヤガヤするのが好きで、仲間とワイワイやりたい。でもそれでお金が入らなかったら朝から夕方までは別のことでお金稼いで夕方からワイワイってのもある訳ですよね。仕事と趣味を分ける、みたいな。だけどそれってやっぱり、昼間の時間を自分の好きなことに使ってないことになる。でも昼間っから好きなことやってそれでお金が入ったら楽じゃないですか。となると、やる仕事は限られてくる。
で、ブレインストーミングとかやってワイワイガヤガヤやっててお金は入る訳ですよね。それで自然とそんな形。多くの人はそれを分けると思いますよ。サラリーマンとか、働いて、アフターファイブや週末で自分の趣味に勤しむみたいな。そういうのも人生としていいとは思うんですけど、ぼくみたいにそういうのができない人もいる訳で。少しでも嫌な事があったらヤダみたいな。ニートみたいな。やっぱ基本はニートなんですね。
―――ここまで軌道に乗せるまでに大変だったことは何ですか?うーん、あんまり思い出さないですね。何かあっても、あ、ネタが増えたって感じで。だって好きなことやってるんだから、誰に文句も言いようがないし、誰かのせいにもできないでしょ。そうしたらもうネタにするしかないよね。だけどもうネタもなくなってきたっていうか、覚えてない‥。だって過去のことでしょ。未来のことしか考えてないから、過去のことなんて思い出せないよ。
ーーー今の仕事で誇りに思うことは?
おー、ないね。それも、そんなもん持ってるイコール止まってる、満足してるって事だよね。
―――今の夢や目標は何ですか?
こういうことやったら面白いんじゃないとか、世の中変わるんじゃないみたいな、そういうのって素朴でもいいからみんな持ってるじゃないですか。そういうのを全部ここに投げかけてもらって、その方法をみんなで考えて、こうやればいいんじゃないってのを提案する。世界中の人が、こういうことやりたいっていうのを全部うちに持って来るようになったらいいよね。楽しいじゃん。みんなの夢が聞けるしね。
―――なぜNPOにしたんですか?
単純に言うとお金目的にしてないってことかな。さっき言った、多様性を高めたい、社会を進化させたいっていうのを一番上に持って来たい訳。選択肢は株式会社かNPOかってどっちかしかないけど、株式会社だとお金が絶対上に来るのね。オーナーが良ければいいんだけど、どんなにオーナーがそこの会社の50%以上株を持っていて、その代ではミッション、ヴィジョンを上にしてできていても、その人が死んじゃったら、そのアホ息子が会社の株を持って、この会社は株式会社なんだから株主に利益を最大限持って来いとなる訳でしょ。
そうなったら、その会社のミッションやヴィジョンは建前に変わって、お金が上に来る。会社を上場するってなれば株を50%なんて持てないから、投資家が株を持って、利益を出せと言うことになる。
NPOは青臭いけど、ミッションに共感してる人がその組織に集まってやっていく訳だから、ミッションが一番上に来る。
―――最後に学生にメッセージを。
うーん、基本的に僕は対等なんで、学生っていう分け方にあんまり興味がないんだよね。
けどね、怖いよね、例えば学生らしくないよねって言われて嬉しくなったりしてるけど、それは学生のエリアの中でちょっと自分が違うんだってだけで、そこから超えれないんだよね。学生だって、めちゃめちゃ金稼いでもいい訳だし、別にスターになってもいい訳だし。だけど学生って範囲でやっちゃうから、自分で枠作って、中途半端になる。その枠に入って気づくと三年生になって、周りが就活しだすと自分もやった方いいんじゃないかなと思い始めて就活したりする訳でしょ。それは自分の望む人生と一致してたらいいけど、一致してなかった時は最悪だよね。型にはめられていくのみ、みたいな。
だからまあ、何でもいいんじゃないですか、好きにやってけば。だって好きにやっても思った以上に大してインパクト出ないんだって。だから、あんまり周りのこと気にしなくていい。死のうが、好きなことやろうが、周りは大して驚かない。そう考えると逆に、周りにあんまり影響与えない訳だから、好きにやっときゃいいんじゃないですか。
―――ありがとうございました。