堀部 篤史 様 (ほりべ あつし)
恵文社一乗寺店店長
京都の注目スポット「恵文社一乗寺店」の店長。本の仕入れから雑貨セレクト、ギャラリーの企画に至るまで、独自のアイディア、経営戦略を展開する。
■恵文社一乗寺店
―――今なさってるお仕事を簡単にご紹介ください。
株式会社恵文社の役員として、一応フルに会社の運営に携わる立場にあります。株式会社恵文社というのは、その下に西大路店、長岡京店、一乗寺店と三店舗あって、ほぼそれぞれの店舗が独立して運営しています。
そこで一乗寺店の店長として、社員・アルバイトみたいに単に売り上げを上げるのではなく、店の利益自体を上げるのを考える仕事ですね。
―――具体的にはどんなことをされているのですか?
自らレジもするし、本の仕入れや、海外での買い付け、インターネット事業やイベントの企画、社員の給料を考えたりまで、かなり幅広く仕事してますね。
よく雑誌の取材等で本のバイヤーみたいに紹介されたりするんですけど、それはほんの一部です。だから恵文社一乗寺店と、株式会社恵文社の利益のために総合的な仕事をしている、という感じですかね。
―――なぜ恵文社で働き始められたのですか?
僕は初めはアルバイトとして入ったんですよ。この店のことは中学生の頃から知ってたんですけどね、面白い店があると。ただその時は規模も内容も全然今の形じゃなくて。
僕がアルバイトで働きだしたのが、8〜9年くらい前になるんですかね。90年代半ばから入って、2000年くらいに社員になって、店長になって今に至ると言う感じですね。
―――アルバイトから社員になった経緯というのは?
大学卒業後ちょっとしたくらいに、ゼストっていう輸入盤店とアルバイトを掛け持ちしていたんですよ。そしてそのうちに恵文社が割と忙しくなってきて、恵文社のオーナーからどっちにするんやみたいな感じで言われて。恵文社の方はもう仕入れメインでやったりしてきてたし、売り上げのこととか考えるんやったら両方アルバイトではやっていけないし、と。
それでレコード屋辞めてこっちに専念しようと決断した時に、それなら社員になってこれからもやってくれって言われて、社員になったんです。
―――では、大学を出て特に何かの職に就こうとはなさらなかったんですか?
アルバイトで好きなことをしてるうちにそれが仕事になって、そこで店の改装など頑張っていくうちに、ちゃんと売り上げが出たりメディアに取り上げられて有名になったりしていったんですね。だから、それに準じて社員になれたり、店長になれたりとちょっとずつ環境が整ってきたというような格好ですね。
だから就職活動の様なことはしてないんですよねぇ。
―――学生時代はどんなことを?
恵文社とレコード屋のバイトをしながら、フリーペーパー出したりメトロでイベントやったりしていましたね。ほとんど大学には行かなかったですね。
元々立命館なんで、エスカレーター式なんですよ。高校受験とか大学受験とかに時間を費やさないとなると、すごく時間がある訳じゃないですか。そこで僕らは趣味にすごい没頭したんですよね。
クラブのパーティであったりとか、そういうのが
人との繋がりにもなって、それを恵文社の仕事にフィードバックできたりもしていますね。
―――学生時代は将来どんなことをしたいと考えていらしたのですか?
それは結構漠然としてたし、今自分がやってるような
好きなことを仕事に出来ればいいなと思ってましたね。それって、よくある逃げ構造ではあるんですけど。
でも結果的に、実際に好きなことを仕事にする、ということにはなりましたけど、
それを仕事にするための努力ってのは必要で。
―――どんな努力ですか?
やっぱり
中途半端ではダメってことですよね。だから、趣味にしてもどっかに属してやるとかじゃなくて、本当に自力で全力で頑張って。それをちゃんと店とかアルバイトでもしっかり出せるようにして。僕の場合は、仕入れや取引など、たまたまそういうのが活かせる仕事だったんですよね。
―――好きなコトを仕事にするっていうことに関してなんですが、本とか音楽とかがお好きだった訳ですよね?
そこで、作る側、つまり作家さんとかミュージシャンとか、そういった方になろうとは思わなかったんですか?
そうですね、そこはやっぱりならなかったですね。
多分90年代に触れてたものが、編集の時代だったというか。でもそれだけではダメなんだなってことも最近すごく思ってることなんですけど。
そういうのからすごく影響を受けていたので、お店を作ることやDJやフリーペーパーも、編集作業の一貫みたいな感じで捉えていたんですね。だから自然に作り手っていう選択肢よりは、
自分の取り入れてきたものを自分なりに提案する、こういう編集作業的なものが面白いな、と。
お店を作るってのは、うちのお店みたいなのは一般の大型書店と違って特殊なんですよね。配本されてきたものをベストセラーから順に並べるのではなくて、莫大にあるアーカイブの中からスタッフがセレクトして、それを並べて提案する。言ってみれば雑誌の編集なんかに近いとこがある訳なんですよね。
―――これからの夢や目標など何かあれば教えてください。
そうですね。
今って、グローバリズムの影響で
どこに住んでても誰もが同じものを買える世の中じゃないですか。チェーン店なんかで。
アメリカとかは特にそうだけど、日本でもやっぱり同じことが起きていて。昔は、東京で育った人には東京で育った人にしかない江戸っ子文化とか、博多なら博多なりのカルチャーとか、そういうその土地なりの原体験みたいなのがあった訳じゃないですか。でも今はそれがどんどん消えていってる。まぁ京都っていうのはそういう独自の文化みたいなのが未だにたくさんあるから好きなんですけどね。
でもそういう風に文化が均質化されてしまうっていうのはやっぱり不幸だなと思って。みんな違った見方というのができなくて、同じになってきてしまう。
だから恵文社っていう、
どこの本屋とも違う、ここにしかない、というのを大事にするっていうのが、こういう世の中への反抗でもある訳ですよね。ここにしかないロケーション、雰囲気を持つ店であり続けたいなと思いますね。
そしてそういう
京都の良さを担うようなアイデアを取り入れていきたいなと思いますね。
―――最後に今の学生にメッセージを。
そうですね、恵文社という本屋の立場として、見てきたことなんですけど。
最近うちの店では女の子の購買力の方が強くて、
男の子は昔に比べて趣味に費やす時間とかエネルギーとかがあんまりないのかなって感じがするんですよ。昔は男の子の方がコアなものを買っていったり、熱心に追及するような感じがあったんですけど。
それが今うちの店では、ちょっと乙女な雰囲気とかスローな感じとか、そういう女の子の購買力がすごく強い。そういう風に変わっていってるんですね。
だから男の子の学生は、好きなことで食べていきたいとかっていうんだったら中途半端はダメで、
メシ我慢するくらいに好きなものにお金をつぎ込んでとことんやらないと先は絶対ないと思う。
まぁそういうのを信じにくい世の中だとは思うんですけどね、景気のこととかありますし。
でも例えばそれでドロップアウトするんだったら、とことん好きなことを追求する方がいいのではないかと。実際そういう人は絶対いるはずなんですけどね。
―――どうもありがとうございました。