畑中 豊司 様 (はたなか とよし)
株式会社データ変換研究所社長サラリーマン時代に技術職も営業職も経験。日本語のテキスト抽出ソフトウェアの必要を感じ起業。
苦しい時期を乗り越え今や世界を視野に入れて事業を展開中。
■株式会社データ変換研究所
―――今なさっているお仕事を簡単にご紹介ください。
データ変換研究所という会社の社長をしています。7年前に起業した時には、私一人しかいなかったので、開発も、営業も、経理も、販促も、全て一人でこなしていました。一応それらしいことはできていたと思います。半年くらい経ってから少しずつ増えてきまして、今は会社の正社員の人数が12人ですね。で、他にもアルバイトや他の会社の人、時々海外からの研修生が来てくれて会社を支えてくれてますので、現在は17人くらいの人数が会社に来てくれています。その中で、私も営業や開発というのはどういう風にしたら良いのかというのはわかっているんですけど、担当の人達がいますので、邪魔しないようにしてます(笑)。
―――社名にもあるデータ変換というのは具体的にはどのようなことなんでしょうか?
ワードやPDFといったパソコン上の文書ファイルをテキスト情報に変換する、ということをしているんです。会社の中にはそういった文書が凄くたくさんありまして、文書だらけになるんです。その中から上手いこと検索して必要な書類を引き出そうとか、個人情報、機密情報が無いか調べたいとか、そういった場面でソフトウェアの機械的な処理によってテキストにしてあげる必要があるんです。そのためのソフト開発をしているのがうちの会社なんですけど、非常に特殊な仕事でして日本にはうち一社だけしかないんですね。だから、京都にあるちっちゃい会社ですけどわざわざ大手の会社も買いにいらっしゃるんですよ。この仕事は、ワードやPDFがバージョンアップされてもきちんとサポートされることを買い手から要求されるような仕事なんです。この会社は、いつまでもずっとデータ変換の仕事をやり続けますよと言うことを起業の時点で宣言してしまった、そういう大きなミッションを抱えた名前を持っているんです。
―――どうしてそのような会社を起ち上げようと思ったんでしょうか?
起業する前には大きな会社にいたんですが、その時にそのような変換ソフトを買ってくる役割だったんです。でも日本には無いので海外のやつを採用したんですね。アメリカの会社のものだったんですけど、そこのスタッフが日本語を知ってるのかよくわからないんですが、おかしい部分があったんですよ。きちんと日本語を取り出せない部分があったりして、問い合わせてみてもなかなか直してくれないんです。そこで自分の会社で作ってしまおうという話をしたんです。ところが、大企業ではある程度規模の大きな仕事でないとやらせてもらえないんです。市場調査してみたところ1億くらいの市場規模でして、10億くらいの規模じゃないとダメだったんです。それなら僕、会社辞めてこれから作りますんで、それが出来るまで買うのは待っててくださいねと言って今の会社を起ち上げたんですよ。
―――日本語できちんと動く変換ソフトが必要だと思ったところまではよくわかるのですが、自分で新たに起業して作ろうとまで踏み切ったきっかけというのは?
1度大勝負をしてみたかったんでしょうね。うまくいけば大きくなっていくでしょうし、失敗しても家族は養っていく義務がありますからおそらく1プログラマとしてどこかの会社に勤めて一生文句を言わずに働くことになってたでしょう。最悪の場合人材派遣みたいな形で生きていくという覚悟はしてましたよ。どう転ぶかは分かりませんでしたが、勝負してみたかったんです。
―――そこにチャンスを見出していたからこそ勝負してみたいと思われたわけですよね?
ええ。日本にはそういう仕事をする会社がなかったこと、そして1億円の市場があると言う話がほんとうだったなら食べていけるだろうと。ですから、そこはよく考えてはいました。
―――昔からいつかは起業してやろうといったことを考えてらしたんですか?
それはまったく考えていませんでしたね。社会でもまれていると色んなことがありまして、考えも変わるんです。僕はもともとソフトウェアの開発を担当していたんです。そこでは10人規模の組織になるくらい売れたソフトも作ったりしたのですが、10年くらい経ったある時、上司から営業の方に転向してみないかという話があったんです。断ることもできないんだろうと諦めて営業に移ったのですが、そこで随分苦労しました。営業と開発というのはまるっきり考え方が違ってるんですよ。どうして良いのか分からないまま年間の売り上げが20万くらいのお荷物さんになっちゃった時代がありました。それでも2年くらい経つとだんだん慣れてきた部分がありまして、だんだんと売れるようになってきたんです。ようやく4000万くらい売れるようになった時に僕の担当していたソフトが次の年度からは販売しないということに決まりまして、せっかくデキが悪い中でも苦労してやってきた物がまたゼロリセットされてしまう。そうしたら来年何をして暮らしていけば良いのかわからなくなってしまいました。そこで考え始めたのがこの変換ネタなんですね。1億の市場があって、自分も技術者に復帰したかったし、ずっと同じ物を売り続ける営業マンにもなれる、そして会社から辞めろと言われることもない。それが自分でやってみようかと思い始めた時です。
―――どこかで経営の勉強もされたんですか?
経営の勉強というのはやり方が難しいですね。僕は、先輩やある分野で頑張っておられる方とか、同じソフト業界の人とか、それぞれ人と会った時に自分の会社の話をするんです。今はこれこれこうでこんな状況なんです、と。そうすると、たいていその人が「じゃあ次はこれをこうしたらいいんだね」っていうのをそっと言ってくれるんです。僕にとってはそれぞれの方が神様なんですけど、そうやっていると神様が僕に次のアクションを教えてくれるんで、それをその通りにしたら良いんです。あれはイヤだとかこれはしてはいかんとか、どうこう言わずにね、分かりましたって言ってそれだけのことをするんです。そしてまた報告してというのを繰り返していると良い方向に進むんです。何か話がきたらあれこれ思いながらも素直にその通りにするというのが基本スタンスなんです。ですから、お客さんにこんな機能が無いのかと言われたら次にはその機能をつけてお渡しするんですよ。そうするうちにだんだん競争力のある強いソフトになっていって、全部やればやがて誰も追いつけないくらいの競争力が出来上がっているでしょうし。
―――辛い時はどのように乗り越えてこられたんですか?
まずはその辛さから逃げないことですよね。夜中にパッと目が覚めて、会社のこととかいろんなことが気になってしまうことがあったんです。皆さんにも寝られない夜があるかもしれません。寝られないには寝られないなりの理由があると思うんです。そういう時には「僕は今自分に起こされて、何か考えようとしているのか、その何かの原因は何か、それでどうしたら良いのかしら」っていうことを、ずっと自問自答しますね。それは、自分の身体がこうしてくれといってるんだろうから、それはそれで受け入れて、自分と話をすれば良いだけなんです。簡単ですよね。そうやって自分の無い知恵を絞っていかなきゃいけない。明日はこれだけのことをしてみよう、とか。それで寝られたらきっと良い結果が待ってますよ。
―――今描いている夢を教えてください。
日本国No.1シェアを誇るデ変研としてはアメリカなんかいっちゃおうかなとか、ヨーロッパではニーズがないかな、とか、今騒がれてる中国には市場があるのかな、とか。そういう勘違いをし始めてますね(笑)。最近では海外の学生を研修生として受け入れたりしているんですが、そういった形で国際交流出来ていると言うことがあって、毎年毎年障壁が低くなってるんですね。今研修生の受け入れをしながら海外対応版ということで中国でも、韓国でもちゃんと動くようにっていう研究活動を会社の中でもできているんですね。そうやって国際的な会社になっていけたら良いなという夢は描いています。ゆくゆくはアメリカ進出、イタリア進出、アジア進出なんていうのも考えてます。こういう話をしてますと、これもまた何か良い情報をくれる人がいるかもしれないじゃないですか。僕はこういうのを見せるのが上手いんですよ(笑)。何かあるとこうして説明したりするんです。で、そうするとまた情報取れるんです。情報は出せば出すほど情報がもらえるものなんです。
―――それでは、最後に学生へのメッセージを。
まぁ、私も学生時代は、そこまで大きなコトは考えてませんでしたし、ちょっと前までサラリーマンしてましたので、とても大きく語れるようなことはなかったんですけどね。常日頃から自分のやりたい分野は何かなということをよく考えて欲しいですね。自分でこれは合ってるなこれは合ってないなとやってると自分に合っていてしかもやってみたい物には自然と惹かれていきますんで。惹かれていったものに、それを運命と思うかどうか知りませんがそこに何か感じる物があるなら、世間から見ておかしなものでない限りはそれを暖かく成長させていくと良いと思います。急に大それたコトを言ったって誰も信じてくれないだろうけど、今なら僕の言葉も少しは、「ウソかホンマかわからんよな」と思ってもらえるところまできてると思うんでね。自分のしたいことを探して、自分からそう進もうかということを考え、向こうも受け入れるとだんだんと引っ張ってくれるというようなことを素直にやっていくとよろしいのではないでしょうか。それは僕の生き方の話ですけど。つきつめてやりたいことって何ってのを探さないとダメだと思うし、あぁこれもいいなあれも良いなこれもいいなと色々とあたってみたら良いと思いますね。
―――ありがとうございました。